入りにし人の 跡ぞ恋しき

ソメイヨシノは江戸の染井村(現 豊島区駒込付近)の庭師たちが作り出した品種で、

種からは発芽しないため、接ぎ木によって全世界に広まりました。

数本の原木からのクローンが、今や世界中の人に愛されています。

 

上千本、中千本、下千本、奥千本と称えられる桜の名所

奈良の吉野にちなんで「ソメイヨシノ」と命名したのだとか。

 

 

熊野~高野山~吉野と、紀州の霊場を2月に巡ってきました。

(熊野古道)

 

吉野山は和歌山の熊野とならぶ修験道の聖地。

役行者(役小角)が開いたとされる金峯山寺を中心に、今も厳かな空気に包まれています。

(国宝 金峯山寺蔵王堂)

 

源義経は、兄の頼朝から追われる身となり、

弁慶などわずかな家来と愛妾の静御前を伴っての逃避行となりますが、

吉野まで逃げてきたところで、霊場ゆえに女人禁制、

泣く泣く静と別れます。

 

その後、従者に裏切られて静は囚われの身に。

鎌倉に送られた静は舞の名手と評判高く、頼朝の前で舞を命じられます。

 

       吉野山 峰の白雪 ふみわけて 入りにし人の 跡ぞ恋しき

 

静は頼朝の勘気を承知で、大勢の鎌倉武士の前で義経を慕う歌を唄ったとか。

見上げた女心です。

(葛飾北斎画 静御前)

 

愛妾… 義経も、父義朝と義朝の愛妾常盤御前の間に生まれた子です。

 

義朝が平家との戦に敗れて、常盤御前が乳飲み子の牛若を胸に抱き

幼い今若と乙若(義経の兄たち)の手を引いて、雪の中を逃げる道中を描いた絵が

保育園児だったころに読んだ「牛若丸と弁慶」の絵本にありました。

 

常盤の辛さ悲しさが印象的で、今でもその絵が忘れられません。

 

50年以上前のこと。今では絵本にはならない題材ですね。

 

昔は地位の高い人、権力のある人に正妻以外の女性がいるのは当たり前で

当事者も周りの人も、恥じるも詰る(なじる)も何もありません。

 

時代がセコくなってしまったのか、それともそこまでの器でないのか、

不運なことでしたね知事さん。

 

by 転がる石