日にち薬

先日、姉の17回目の命日を迎えました。

 

埼玉に住んでいた姉は、17年前、いつも通りの朝に突然倒れました。
当時、中学生の長女を一番上に、三人の子供がいて、まさに子育て真っ最中でした。
旦那さんから連絡を受け、母を助手席に乗せ、とりあえず向かいました。

 

大きな病院のICUのベッドに姉はいました。
昏睡状態でした。
けれど、僕も、母も、そして姉の旦那さんも、そのうち目を覚まして、
「ごめ~ん、迷惑掛けたね、、、」と、いつもの笑顔で言ってくれると思っていました。
ところが、迎えた三日目の朝、意識が戻ることなく、姉は静かに42年の生涯を閉じました。

 

信じられなかったです。
倒れる一週間前に、電話をよこして話したばかりだったのに、元気に笑っていたのに、
早朝の病院の廊下に、僕は一人で呆然と立ち尽くしていました、
娘を失った母、そして妻を失った兄の嗚咽が病室から廊下まで聞こえました、、、
なにより、子供たちの泣き崩れる姿を見るのが一番辛かった、、、
とても、とても、悲しい思い出です

 

しかし、いつまでも悲しんでいることは出来ませんでした、
次から次にやることはあります、
何もできないけど、僕は率先して動きました。
悲しみをごまかすように、、、
そして、姉の旅立ちに後悔することのないように

 

一通り事が終わり時間があったので、ホールの待合室で休んで、そこある雑誌を眺めていました、
すると、そこには瀬戸内寂聴さんのコラムがありました、
そこには、

—どんな悲しみや、苦しみでも、歳月が癒してくれますよ、
—時間こそが心の傷の妙薬なのですよ、
—京都では、それを「日にち薬」と呼びますよ、と。

それを読んだ瞬間、それまで我慢していた涙が、一気に流れ落ちました
自分でもびっくりするくらい止めどなく、、、

悲しい時は、泣きなさい、心行くまで泣きなさい、
きっと時間が、その深い深い傷を少しづつ癒してくれるのだから、、、
旅立った姉が優しく肩を叩いてくれた気がしました、、、
ホールの隅の長椅子に座り、長い時間一人で泣いていました

 

今でも、毎日朝晩、仏壇の前で手を合わせる時、
時々、姉と話します

姉の3人の子供たちの事、そして7人の孫の事を報告しながら、、、
姉が亡くなって、4年後に後を追うように病気で亡くなった旦那さんも交えて、、、

 

 

by質実剛健