ガリ版刷りの許可証

軽減税率
生類憐みの令に匹敵する天下の悪法である。
私の経理事務の手間は倍どころか4倍ぐらいになった気がする。
そこにキャッシュレス、ペーパーレスの時代の波が重なって
私の憂鬱をさらに倍化させる。

預金から引き落とされた経費が9月に発生したものか10月なのか?
発送した商品の代金が間違いなく入金されているか?
確認のためいちいち各社のHPにログインして求める情報がどこにあるのか?
WEBの迷路を右往左往する羽目になる。

「IT音痴に人権は無い」
自分もさっぱりダメな息子の自嘲に納得するが
「こんな悪い世の中、ITなんかくそくらえ」と歳相応の悪態をつく。

写真は昭和23年に交付された酒類販売場の許可証。

竹内幸は私の祖母。
昭和29年、私の産まれる遙か前に39歳で亡くなっている。

彼女の連れ合い、私の祖父の政司はその前、21年に37歳の若さで亡くなっている。

それ以前から我が家は酒屋を営んでいたはずなので、この許可証が
名義変更によるものか戦後の酒税法改正によるものか詳しいいきさつはわからないが
病弱だったという祖母は、終戦後の混乱の中、夫に先立たれ、4人の子供を抱えて
この許可証を頼りに懸命に家を守ったのだろう。

昭和23年、この国も我が家も貧しかった。
70年後にITなんて魍魎が跋扈する時代がくるなど夢想するヒマも無く
みんな生きるために必死だったろう。

後に残そうとは思わないが、ガリ版刷り手書きのこの許可証が家宝と
私は思っている。

by 転がる石