憧れのホットケーキ
こどもの頃、うちは貧乏だったがそれ以上に
うちの母親はケチだった。
「ホットケーキというものを食べてみたい」とねだったら、
天ぷらを揚げた残りの粉に砂糖を入れて
フライパンで焼いて「ホットケーキ食べれ」と出された。
薄っぺらで、油でベトベトなモノだった。
友達のお誕生会に行ったら、
そこのお母さんの作ったホットケーキはふわふわだった。
母親に騙されたのと、なんとなくうちは貧乏なんだと感じた。
ホットケーキはトラウマになった。
父親は昔かたぎの商人で、元旦以外は店を休まなかった。
結婚して何年かしてから、ようやく月一ぐらい休むようになった。
休みの日の朝食にはカミさんにホットケーキをリクエストした。
何事もケチらないカミさんは、山のようにホットケーキを焼いて
僕はそれをパクパク食べた。
だから脂肪がいっぱいついたけど、トラウマはなくなった。
もうすぐ7年になる。
カミさんが亡くなってから、うちでホットケーキは食べていない。