ほどく
祭壇に線香を供える。
葬儀屋が用意したちょっと大きめの線香立てだが、
日に日にシャリシャリした違和感を覚えるようになってきた。
そうか、灰汁(あく)の中の線香が残っているのか…
気づいて、割り箸で線香立てをかき混ぜてみる。
いっぱい出てくる。
この20日ほどで、いったい何本の線香が立てられたのだろう。
一つ一つ拾って捨てる。
ふるいにかけた方が早いな。
いっそ灰汁ごと全部捨てて、新しい灰汁を入れようか?
灰汁ってのはどこかで売っているのかな?
こんな物でも高級品とかあるんだろうか?
そんなことをふと考えるが、こういう地味な作業がけっこう好きだ。
もう無いだろうとかき混ぜれば、また何本も出てくる。
1時間もかき回しては一つ一つ拾って捨てる。
編み物の好きだったカミさんが、
毛糸がこんがらかると
はい、お願いね。得意でしょう。
と、よこしたもんだ。
神経を集中して、時間をかけてほどいて、褒められた。
はい、よくできました。
すっかり着ることもなくなったが、こんなに寒くては
10数年ぶりに手編みのセーターを引っぱり出してみようかな。
by ガンダルフ