幻惑のブロードウェイ/ジェネシス

音楽と自転車

1974年11月発表の2枚組アルバム。「The Lamb Lies Down on Broadway」
ジェネシス6枚目のアルバムで、これを最後に1975年ピーター・ガブリエル(以下ピーガブ)はバンドを脱退した。

1975年と言えば、オレは高校1年生。
同じクラスに、K君というヤツがいた。
彼はお姉さんの影響で、4歳からビートルズを聴いて育ったと豪語していた。
やたらとロックに詳しかった。

オレはいつしか彼とレコードの貸し借りをするようになった。
当時レコードは1枚2,300円前後で、月に1枚買えるかどうかという値段だったので、
レコードを貸し借りできる友人が同じクラスにいたのはとてもラッキーだった。
お互いに知らないバンドの音を聴くことができるのだから、彼もきっとそう思っていたに違いない。

そんな折、K君がこの2枚組アルバム「幻惑のブロードウェイ」を貸してくれた。
オレはジェネシスを聴くのはこれが初めてだった。
が、ビートルズやクイーンを聴いていたオレには、ピーガブのダミ声がどうも馴染めなかった。

どうやらK君も、これはそんなに好きなアルバムではなかったらしい。
「よかったら買わないか?」と言ってきたが、オレは体よく断った。

その後ジェネシスは、ピーガブに代わってドラムスのフィル・コリンズがフロントマンとなり、
曲調も少しずつポップになって、アルバムも大ヒットすることになる。

オレもその頃からジェネシスを本格的に聴きはじめ、徐々に遡って昔のアルバムを聴くようになった。
するとどうだろう。
あんなに苦手だったピーガブの声が、なんとも心地よいのである。
分からないものだ。人の好みは突然変わることがある。
オレは今ではこのアルバムこそ、ジェネシスの最高傑作であると思っている。
もっと言えば、プログレ・アルバム10選に入る傑作だと思っている。

アルバムのジャケット・デザインはヒプノシスが担当し、写真を見ているだけで物語に引き込まれる。
今年の3月には発売50周年を記念したスーパーデラックスエディションがリリースされる予定だ。
それにはアルバム発表当時の丸ごとライブ音源や、Blu-rayにはドルビーアトモスも収録されるようなので、またしても買うしかない。
不思議で奇妙な物語の世界にどっぷりと漬かってみたいと思う。