こんにちは。ほでらです。
今回新しくコラムのコーナーが始まるにあたって、「音楽と自転車」というお題をいただいたので、
時々自転車の話を交えながら、私が大好きなレコード(中でも名盤と言われるヤツ)について書きたいと思います。
今回選んだアルバムは「666(邦題:アフロディテス・チャイルドの不思議な世界)」。
ギリシャ出身のバンド、Aphrodite’s Child(アフロディテス・チャイルド)の3枚目にして最後のアルバムです。
リーダー、作曲者はヴァンゲリス・パパタナシュー。そう、あの有名なヴァンゲリスです。
これは1972年発表のアルバムで、当時日本でも発売されましたが、ほとんど話題にならず数ヶ月で廃盤になっています。
ところが1976年に映画「オーメン」が製作され、世界中で大ヒットしました。
それがきっかけでこのアルバムは再発売され、日本でも話題になりました。
イギリスではこの映画の大ヒットにあやかって、主人公ダミアンの頭にあった「666」のあざをデザインしたジャケットで再発されたほどです。
メンバー同士の意見の食い違いで解散したにもかかわらず、契約の関係で仕方なく再結成して作った最後のアルバム「666」。
しかしそんな理由がきっかけで、奇跡の名盤を生み出すことになろうとは面白いものです。
前2枚のアルバムはポップな歌もの路線でしたが、ヴァンゲリスはそんなバンドの指向と合わずに解散したのかもしれません。
結果として「666」は、前作までとは全くの別物になりました。
「666」は、新約聖書のヨハネの黙示録を題材としたコンセプトアルバムで、2枚組の大作です。
内容的にはシングルカットできそうな曲はあまりありませんが、聴き進むうちにだんだん景色が見えてくるような、まるで映画を観ているような不思議なアルバムです。
私がこのアルバムを知ったきっかけは、NHK-FM放送で「エーゲ海(Aegian Sea)」が流れたからです。
1976年(当時高校2年生)のことでした。
当時よくエア・チェックをして音楽番組を録音していましたが、この曲を聴いた途端に大きな衝撃を受けました。
私はそれまで聴いたことのなかったキーボードの深遠な響きに魅了され、いつしか見たこともないエーゲ海に思いを馳せるようになりました。
「エーゲ海」はこのアルバム最大のクライマックスであり、ヴァンゲリスの真骨頂を示す曲でもあります。
その後の「ブレードランナー」や「炎のランナー」のテーマを連想させるような特徴的なシンセの音色が所々に出てきます。
そしてもう一曲、どうしても触れなくてはならない曲があります。
それはレコードで言えばC面の5曲目に収められた「∞(infinity)」という曲で二つ目のクライマックスです。
当時、たぶん夏だったと思うのですが、エアコンもない2階の部屋で、窓を全開にしてこのアルバムを大音量で聴いていました。
そして「∞」が大音量で流れ始めた時、お袋が血相を変えてドタドタと階段を駆け上がってきて、
大声で「やめれ!」と私のことを怒鳴りました。
まあ、分からなくもありません。
おそらくお袋は、私が急に色気づいてエロテープでも聴いていると思ったのでしょう。
実は「∞」はギリシャの大女優イレーネ・パパス(ナバロンの要塞で有名)が、声と打楽器のみで喜怒哀楽を表現したような曲なのですが、
今聴いても、表現力すごいなーとは思うけど、エロっぽいかどうかは微妙です。私はあまり色気を感じたことはありません。
でもあの日以来、この曲を大音量で聴くことは無くなりました。そんな思い出の曲でもあり、問題作でもあります。
ところで皆さんが「エーゲ海」を思い浮かべる曲ってありますか?
やはりジュディ・オングの「魅せられて」でしょうか。
Wind is blowing from the Aegean…(エーゲ海から風が吹いている…)
阿木燿子(作詞)、筒美京平(作曲)の大ヒット曲です。
行ったことがないので分かりませんが、エーゲ海って、きっとエキゾチックなメロディーが似合いそうな所なんでしょうね。
でも私にとってエーゲ海のイメージは、今でもアフロディテス・チャイルドの「エーゲ海」。
大音量で聴いて欲しい名曲です。
勇気のある人は、ぜひ窓を全開にして「∞」も大音量で聴いてみてください。
きっと恐ろしいことが待ってるはずです。