鎮魂の月

 

お盆のご挨拶にお寺さんに行った。

うちのお寺の奥様は気さくな美人でいい人だ。

 

ついでに回忌の確認。

カミさんの七回忌はわかっていたが、もう一つ百回忌があたっていた。

「俗名トモ」さんだ。

 

30年以上前、うちがまだ上町で営業していた頃、

たぶん軽い認知症になっていた わたごんのお婆さんが時々うちの店に来て

「おともさ、いだがい」と尋ねた。

「いねよ」と答えると

「いーや、どご行ったろ」と言いながら帰っていった。

 

たぶんトモさんは十ぐらいで亡くなったのだろう。

わたごんのお婆さんとは幼馴染だったに違いない。

100年以上前の少女たちは、どんな話しをしてどんな夢を描いていたのだろう?

 

お盆を迎える。

母は毎年変わらないお盆の飾りに気を揉んでいる。

せんべいだとかお団子だとか柳箸だとか、そういうしきたりを私は知らない。

お盆やお彼岸に限らず、できるだけ思ってあげることが

供養になると私は思っている。

 

七夕の十二灯流しがあって、広島の日があって、長崎の日があって、お盆を迎えて、

終戦の日があって、8月は鎮魂の月だ。

 

わたごんのお婆さんはいいことをしてくれた。

おかげで私は見たことも無いトモさんのことを思っている。

少しだけ功徳を積ませてもらっている。

 

by 転がる石