長者屋敷の男松

今年も残すところあとわずか。
今年最後のブログ当番は、こんな夢あるお話を。

岩船むかし話より

「長者屋敷の男松」

むかし、ある年の大みそかに一人の旅人が岩船へやってきた。
男は路銀を使い果たし、冷たい霙のそぼ降るその夜の泊まる場所とてなかった。
彼は庄屋の家へ行ってせめて門の下なり、雪のあたらぬ場所へ一晩泊めてもらえぬかと頼んだ。
しかし明日は元旦で早朝から年始客も多いことで、門へは泊められぬと断られた。
それでも気の毒に思い、大きなにぎり飯を作ってやり、町はずれに庚申堂があるが、そこなら屋根も壁もあって吹雪は入らないが、化けもんが出るという話もあるが、そこでよかったら泊まるがいいと教えてくれた。
旅人は、世の中に化けもんなどいるものでなし、と喜んで荒れた庚申堂へ泊まることにした。
ところが真夜中になると、急に生ぬるい風邪と家鳴り震動がして、古井戸から妖怪らしい姿かたちのおぼろげな老人が出てきた。
「ヒエ!おまえはダ、ダ誰だ!」
「俺しは、化けもんだが怖くないか。」
「怖い。怖い。怖いが外は寒くて行くところがない。」
「おまえは正直で勇気のある男だ。今まで何十人もここへ泊まったが、俺を見て逃げないのはお前だけだ。俺しはこの古井戸へ泥棒どもが投げ込んだ小判の精だ。泥棒どもは仲間喧嘩の果て、斬り合いをして全部死んだ。俺しはお前のものになるから、この井戸の底から小判を出してくれ。」
と言ったと思うと、スーと消えてしもた。
元旦の朝早く、男は井戸の金を引き上げて長者になった。
彼は近くの畑と松林を買い占めて、広い屋敷と御殿のような家を建てたが、都への用を思いたち、千両箱三十ヶを庭の大きな男末の根方へ深く埋めて出発した。
しかし、運悪く、旅の途中に病気になって死んでしまった。
それで、今も長者屋敷には、長者が埋めた小判が眠っている。
しかし、何百年も前の大きな男松はとうに伐り倒されて、今ではこのあたりは全部女松ばかりなので、その場所がどこにあるか知る人もいない。
お前も元旦の朝げ早う、長者屋敷を掘ってみれ。・・・

先日の有馬記念で夢破れた方、これで一発逆転はいかがでしょう。
(あ、まだ年末ジャンボも望みがありますね^^)

それではよいお年を。

byラー定