イワフネドリーム

はじめにお断りいたします。
妄想が膨らみ、超長文になってしまいました。
非常にくだらない話です、興味の無い方、時間の無い方はすぐにブログを閉じてください。
御用の無い方、お暇な方はどうぞ。

キャリーオーバー中のロト6が当った。
妄想なので、当然のことながら、あまり喜びは湧かない・・・
しかし、続けて妄想してみる。

借金をみんな返してもまだこんなに残っている。
リボ払い中の、はまなすのつけも全部払ったが、あまり減らない。
思い切って、ディープインパクトと名牝○○○○の競走馬を買ってみた。
当選金の殆んどが無くなった・・・
それでも、デビューするまでの預託金と飼葉料くらいは残っている。
岩船で初めての競走馬、安易だが『イワフネドリーム』と名付けた。
時々、調教師の先生から、成長の具合や調教の様子が伝えられる。
そんなある日、「デビューが決まりました。二回新潟八日目、第5レースです。是非応援に来て下さい。」
あちゃー  港フェスティバルとぶつかった・・・
皆には、まだ馬主になったことを話していない・・・
悩んだあげく、法事ということで、港フェスティバルを欠席し、新潟競馬場に駆けつけた。
馬主席ではなく、あえてゴール板前に陣取る。
暑い日だった。8本目のビール(500ml缶)のプルトップを開けた時、5レース1600M戦『メイクデビュー』のファンファーレが鳴った。
優秀な血統からか、単勝2.2倍の一番人気。
バラけたスタートだったがイワフネドリームはまずまずの位置どり。
一頭大逃げをうつ馬の五番手を追走、3~4コーナーで内ラチ沿いを通り直線へ向かうと、いっきに加速し、8馬身差を付け圧勝。
ちょっとぬるくなったビールを飲み干し、単勝馬券を払い戻し機で換金した220円をポケットに突っ込み、帰路についた。
フィナーレと後片付けは手伝えるかナ・・・

岩船に着いてみると、青年部の仲間たちが大騒ぎで迎えてくれた。
競馬好きが、馬柱から見つけた馬名と馬主でどうやらばれたらしい・・・
勝ったことも当然知っていた。
申し訳なかったが、慰労会は『イワフネドリーム』の祝勝会となった。
新潟2歳ステークスを使うつもりだったが、疲れが残っているということで自重した。

12月、一勝馬ながら朝日フュチューリティーステークスに登録、抽選を通り出走がかなった。
しかし、当日は鶴友会の日帰り旅行&忘年会、中山に駆けつけることは出来なかった。
レースは宴会の真っ最中、馬主であることを忘れ、コンパちゃんたちと盛り上がっている間に行われた。
結果はあげふさんからの℡で知った。
「おめでとうございます!! 強かったですねぇ~」
見ていないとは云えず、「うんうん、ありがと、また応援してくれっしゃね。クラッシックいぐかでねぇ」

上機嫌の数日後、調教師から衝撃の連絡が入った。
「イワフネドリームはあと、3~4レースしか使えません。一生懸命走りすぎる馬で、レース後の反動が・・・酷使すると、脚が・・・」
「それじゃあ、皐月賞は・・・」
「直接、ぶつけましょう。皐月賞からダービー、そして菊へ。三冠へ。」
絶句した。
「トライアルを使わず、クラッシック・・・三冠・・・」

迎えた皐月賞当日、今度こそ愛馬のもとへ駆けつけるはずだったが、あいにく石動様とぶつかってしまい家で観戦することに。
こっちは小雨のぱらつく肌寒い日曜だったが、中山は快晴、馬場状態も良。
休み明けのイワフネドリームは、4番人気の4.6倍。
この頃になると、イワフネドリームを知らない人は皆無、会う人皆が頑張ってと声を掛けてくれる。
頑張ってほしい・・・
岩船中の注目のなかスタートがきられた。
熾烈な先行争いを制した弥生賞馬が、ハイペースでレースを作る中、イワフネドリームは後方三番手を追走。
二馬身ほど前にいたきさらぎ賞馬にあわせるように、少しづつ先団との差を詰める、4コーナーを回り直線に向いた時、先頭集団は6頭、坂を上りイワフネドリームは四番手から三番手。
「差せ~」
坂を上りきったあと、根性でもう一伸びしたイワフネドリームが前の二頭を首差とらえた。

その夜、公民館で行われた石動様の直会は、またもイワフネドリームの祝勝会となった。

日本ダービーは毎年、岩小の運動会と重なる。
こちらは快晴の運動会日和だが、府中は前日からの雨が降り続く不良馬場。
皐月賞を辛勝したイワフネドリームは単勝2.7倍の一番人気。
しかし、差が無く皐月賞二着馬が2.9倍、青葉賞馬が3.0倍と続き、各紙の予想陣は上位拮抗と声をそろえた。
末娘の最後の運動会に目をやりながら、心は雨の府中へ。
昼休み、娘に「パパは昼から用事があって応援出来ないけど、徒競走頑張れよ。」と声をかけ、あげふさんと供に、毎年恒例のスナックKへ。
G1のファンファーレが府中競馬場に鳴り響く。
スタートした。
抜群のスタートをきったイワフネドリームは先頭に立つ。競りかけてくる馬もいない。
「逃げるのか?」今までのレース展開と違うことに不安が掠めた。
三馬身ほどのリードを保ちながらの平均ペース、いや不良馬場だから、やや速いくらいか・・・
大欅で一瞬馬群が消え、再びその姿を現し、直線を向いたとき、イワフネドリームのリードは5,6馬身に広がっていた。
長い直線で、その差はどんどん広がっていく、7馬身8馬身・・・
後続に影も踏ませぬ10馬身差の圧勝だった。
ここまで強いのか・・・
この不良馬場で、泥ひとつかぶっていないその勇姿に驚愕した。
イワフネドリームは皐月賞をダービーのたたき台にしたのだ。
『いっわふねっ、いっわふねっ』
府中にこだまするイワフネドリームを称賛するイワフネコールが鳴り止まない。
ダービー馬の栄光。
ちなみに、娘の徒競走は、ブービーだった・・・

そして、迎えた菊花賞は、あろうことか岩船祭り当日だった。
いくら三冠がかかっているとはいえ、岩船祭りを欠礼するわけにはいかない。
また、この地で応援することになった。
祭囃子と引き手たちの喧騒のなか、神社に詰めたおしゃぎりから離れ、快晴の秋空を見上げた。
遥かなる淀に思いを込めて・・・

縦新町を折り返し、新田町から上町に差し掛かる頃、私は一人屋台の警護からはずれ、自宅へと戻った。
屋台の曳行にまるで無頓着、まだこんなところで管を巻く酔客を横目に、リビングのテレビの前に座った。
テレビは菊花賞の本馬場入場を映し出し、間も無く発走の近いことをしらせた。
イワフネドリームの単勝は1.1倍、断然の一番人気。
しかし、ゲート内で立ち上がりかけたとき、スタートがきられ、騎手を振り落とさんばかりに伸び上がり出遅れた。
「おおっと、一番人気のイワフネドリーム、スタートでおおきく出遅れた~」
実況のアナウンサーが絶叫する。
絶好のスタートをきったのはマチカネサキダイコ。
夏の北海道で2勝し、トライアルの神戸新聞杯を逃げきった上がり馬だ。
その差20馬身・・・致命的な出遅れだった。
悪夢のような現実だったが、画面を見つめ続けた。
画面には先頭のマチカネサキダイコと、それに取り付こうする集団しか写らない。
画面が広角でレースの隊列を映し出した時、そのはじっこにイワフネドリームがいた。
スタート時よりその差は詰まっていたが、それでもまだ12~13馬身はある。
慌てて脚を使い過ぎるな、菊は長い。心の中でつぶやいた。

3コーナー手前で、ようやく馬群の最後尾に取り付いたイワフネドリームは、そのまま捲くる様に、その馬群をいっきに飲み込んでいった。
直線を向いて大歓声のスタンド前、残るは軽快に逃げるマチカネサキダイコ一頭。
だが、その差はまだ4馬身はある。
ここまで追い上げるのに使った脚が影響してか、その差はなかなか詰まらない・・・
駄目か・・・
あきらめかけたとき、逃げるマチカネサキダイコのペースが落ちた。
彼も初めての3000mという距離に疲れていたのだ。

最悪のスタート、致命的なハンデを克服しイワフネドリームは、ついに三冠を達成した。
まるでマチカネサキダイコが、イワフネドリームの露払いをしたように・・・

屋台に戻ると薄暮の中、上町の折り返しで提灯のあかりがゆれていた。

有馬記念の人気投票で二位に支持されたイワフネドリーム、ファンの期待を裏切るわけにはいかない、調教師と相談して出走を決めた。
そして、これがイワフネドリームのラストラン・・・
人気投票一位は、一昨年の四冠馬、作年から今年にかけてもG1を6勝している現役最強馬のオル○ェー○○だ。
彼もまた、この有馬記念が引退レースだった。

毎年、有馬はスナックKで楽しむのが慣例だった、それを破るわけにはいかない。
前日の、はまなすの忘年会で飲みすぎた身体を振るいたたせ、あげふさん、まるつさんと供にスナックKへ出陣した。
一番人気は怪物オル○ェー○○、単勝1.5倍。
二番人気がイワフネドリーム、単勝1.9倍。
この二頭が人気を分け合い、最強馬の名を賭けたレースとなったが、出走馬16頭中、G1馬が8頭、他の馬もすべて重賞ウイナーで、グランプリに相応しい豪華なメンバーだった。

中山競馬場に鳴り響くファンファーレ、場内の期待と興奮が最高潮に達したとき、大歓声のなかスタートがきられた。
各馬けん制しあうようなスローな流れ、オル○ェー○○が前から5頭目の好位、イワフネドリームもそのすぐ後ろにつけた。
レースは直線を向いたとき、王者オル○ェー○○が仕掛け、各馬が一斉に動きだす。
イワフネドリームも追従し、抜け出したオル○ェー○○に取り付き、馬体を合わせるように二頭の競り合いになった。
そのとき、一瞬イワフネドリームが、ガクッとフォームを崩した。
一瞬、背中に冷たいものが走った。まさか・・・
しかし、彼は走ることを止めない、懸命にオル○ェー○○に並びかける。
最後の最後まで、二頭が競り合い、並ぶようにゴール板を走り抜けた。

すぐに騎手は下馬し、彼の足もとを見ている。

長い写真判定の結果、勝ったのはオル○ェー○○、3㎝のハナ差でイワフネドリームは二着に敗れた。
2400mのレースで、わずか3㎝およばなかったのだ。
しかも、彼には何らかのアクシデントがあった。

ビクトリーランを続けるグランプリホース、中山競馬場に鳴り渡るオル○ェコールのなか、彼は静かにターフから立ち去ろうとした。その時、
「いっわふねぇ、いっわふねぇ」の彼を讃えるイワフネコールが、ちいさな輪の中でおこり、それは段々と大きくなり、先ほどまでのオル○ェコールに取って代わった。

ここで私は、長い長い妄想から漸く我に返った。
ぼうっとした頭にニコチンを入れ、仕事に戻る。

この品物は工賃460円・・・
イワフネドリームの皐月賞単勝オッズと同じだ・・・
危うくまた、妄想の世界に引き戻されそうになった。

追記

イワフネドリーム号  生涯成績  6戦5勝
           獲得賞金  〇億○千万円
翌年、彼の下した菊花賞2着馬が天皇賞・春を、皐月賞2着馬が安田記念とマイルチャンピオンシップを、そしてダービー2着馬が宝塚記念とジャパンカップを勝ち最強世代と呼ばれる。そして、イワフネドリームは『最強世代の奇跡の三冠馬』と称せられた。
岩船では彼の獲得賞金をファンドに、商工業会と町づくり協議会の尽力により、緑地公園そばに、イワフネドリームのモニュメントと記念館、それに隣接する道の駅が造られ、連日多くの観光客で賑わった。

by shrts-ya (青年部卒業を記念して)