ノスタルジー
TVドラマの名作「前略おふくろ様」も、40年も前になります。
(確かK先輩は全作DVDをコレクションしていたはず)
原作は倉本聡。
主人公は山形から東京へ家出してきた、駆け出しの板前の三郎(萩原健一)。
三郎から母親への手紙のナレーションがドラマの芯となっていました。
三郎の親戚のトラブルメーカーの海ちゃんを演じたのは新人女優だった桃井かおり。
舌足らずなしゃべり方がハマって一躍人気女優になりました。
梅宮辰夫、室田日出男、川谷拓三、小松政夫といった脇役がいい味を出していました。
三郎の恋人のかすみちゃんは坂口良子。おきゃんな役柄でとても可愛かったです。
音楽を担当したのは井上堯之。
メインタイトルをはじめ音楽が素晴らしくて、サントラ盤は私の愛聴CDの一つです。
中学生の時に放映されて、少なからず人格形成に影響を受けたように思います。
自分で撮ったりファイリングしたりは全然しないくせに、
古い写真を見ると、そこはかとない郷愁を憶えます。
何度も新聞に折り込まれたチラシの誘惑に負けて「村上・岩船の昭和」なる写真集を購入しました。
親世代のことなので知らなかったけど、各郷の青年団は男女いっしょに活動していたのですね。
そんな写真を見て「前略おふくろ様」を思い出したのです。
三郎が、かすみちゃんからプロポーズされたことを母への手紙に書いて
二人の将来のことに思いを馳せ、そして母への思いにもいたるのです。
「…大きくなった子供たちは、かすみちゃんを年老いた母親としか見ない。
昔、分田上で働いていた若くて可愛かった母親を知ろうともしない…
前略おふくろ様。俺はあなたの青春を知りません。
おやじと出会い、恋をし、そんなあなたを俺は知ろうともしなかったわけで…」
ヒューマニスト倉本聡の面目躍如であります。
高校あるいは中学を卒業して地元で働き出して、青年団活動に励んで…
~昭和の青春~
この田舎にもたくさんの恋愛があり、いくつものカップルが結ばれて地元に根を下ろして、
だからこそ今の私たちがいるのです。
高度成長、都市への人口集中、バブル経済、IT革命、
功罪を語ればキリがないけど、今さら昔には戻れません。
郷愁は尽きねども、ノスタルジーは個人的な情緒にとどまるべきで、
世の中の変化をことさら悪しざまにけなすことはしない方が賢明です。
「陽の沈まぬ国」大英帝国への高齢者のノスタルジーが
世界を混乱させる選挙結果を出してしまって、かの国の若者は途方に暮れています。
優れた脚本家でもこの後のストーリーを描くのは難しいことでしょう。
私はDVDは持ち合わせていないので、サントラ盤CDを聞き直して
一人で昭和のノスタルジーに浸ることにします。
byガンダルフ