恐怖の頭脳改革(エマーソン・レイク&パーマー)

音楽と自転車

Emerson, Lake And Palmer(略して EL&P)の1973年のアルバム「恐怖の頭脳改革」である。
原題は”Brain Salad Surgery “。直訳すると「脳みそサラダ外科手術」。
なんのこっちゃ。

ま、アルバムタイトルのことはさておき、これはEL&Pの最高傑作だとオレは思っている。
おそらく世の中には「タルカス」や「展覧会の絵」を一番に選ぶ人も多くいると思うが、
オレはLPレコードは、楽曲だけでなくジャケットも含めて評価する派なので、
やはりこのアルバムに軍配が上がる。

まずジャケットのアートが、映画「エイリアン」をデザインしたH.R.ギーガーである。

ジャケットは観音開きになっており、開けるとギリシャ神話に出てくる妖女メドゥーサが現れる。
メドゥーサは見たものを石にしてしまう力を持っているのだが、幸いにも目を閉じている。
目があいてたらどうしよう、とジャケットを開けるたびにドキドキする。
あー、怖い怖い。

 

 

 

 

 

エマーソン・レイク&パーマーはその名の通り、キース・エマーソン(keyboard)、
グレッグ・レイク(bass&vocal)、カール・パーマー(drums)の3人によるトリオの
バンドである。キング・クリムゾン、ピンク・フロイド、イエス、ジェネシスとともに、
「プログレ5大バンド」の一つとされている。EL&Pの大成功を受け、世界中に数多くの
キーボード・トリオが生まれたことからも、ロック界に与えた影響は計り知れない。

さて、LPレコードのA面は「聖地エルサレム」で幕を開ける。
ウィリアム・ブレイクの詩にヒューバート・パリーが曲を付けた合唱曲で、競技によっては
イングランド代表はこれを国歌として使用するらしい。先のロンドン・オリンピックの開会式で、
イングランドの人たちがこの歌を合唱する姿を見たときはとても感動したのを覚えている。
それにしてもグレッグ・レイクの歌声は、いつ聴いても素晴らしい!

続く「トッカータ」「スティル...ユー・ターン・ミー・オン」「用心棒ベニー」の3曲の小曲の後、
いよいよ5曲目「悪の教典#9」の始まりだ。
この曲は29分47秒もあり、LPの片面では収まりきらないので、A面の最後に「第1印象 パート1」
があって、B面は「第1印象 パート2」から始まり「第3印象」までという変則的な収録のされ方だった。
CDの時代になってようやく1曲としてつながった。

こんな長い曲にもかかわらず、とんでもない演奏テクニックと緻密なアレンジで、聴く者を飽きさせない。
複雑かつ壮大な展開が続きまくり、いったん聴き始めると、途中で止めることができないほどだ。
まるでメドゥーサに睨まれてしまったかのように、身動きできなくなるのである。