ハイヤホーホー

 

とくに南日本の古い言葉で、南風を「ハエ」と言います。
元々は海が時化る前兆の意味合いだったようですが、いつからか
船を出すのに適した穏やかな風を指すようになりました。

熊本の牛深(うしぶか)に「牛深ハイヤ節」という有名な歌、踊りがあります。
「ハイヤ」は「ハエ」が転じて、「南風よ」という意味だろうと思われますが、
港で風待ちをする船乗りたちによって歌い始められたのでしょう。

踊りの方はいかにも南国らしい開放的でコミカルな振りです。
今では観光誘客にも大いに活躍していますが、
踊り手の赤い蹴出しがなんとも艶っぽい・・(^.^)

踊りと言えば徳島の「阿波踊り」でしょうが、
「牛深ハイヤ節」は「阿波踊り」の原型だとも言われています。

「阿波踊り」や青森の「ねぶた」(のハネト)のように
シンプルなリズム・踊りは大衆をトランス状態に引き込みます。
シンプルなリフレインによるトランスという点では、岩船祭りの先太鼓にも
ローリングストーンズの「ジャンピング・ジャック・フラッシュ」にも通じます。

歌の方の「ハイヤ節」は船乗りたちによって港々に伝えられ、
その土地に根づいて変化し、越中八尾では「おわら節」、佐渡では「おけさ節」、
津軽では「アイヤ節」などに変化したと言われています。

「阿波踊り」が西の横綱なら、「おわら」や「おけさ」の踊りは東の横綱、
しかもシンプル・トランスの対極とも言える優美・幽玄の極致ですが、
そのルーツが同じだとすると、変化や洗練に要した時間の膨大さに感嘆を禁じ得ません。

上町や上大町の「ハイヤホーホー」、新町の「ハイエー ハーイーイー」などの
(他の町内にもあるかもしれませんね)お祭りの囃子言葉は、
岩船に伝わった時には本来の意味は忘れられて、言葉だけが伝わったと思いますが、
「南風よ吹いてくれ」と船出にふさわしい良風を待ち望む、
船乗りたちの願いが込められているような気がするのです。

日本の民俗音楽の伝播にも思いを馳せながら、
皆さまどうぞ岩船祭りをお楽しみください。

by ガンダルフ